最新の研究によって目標設定がエネルギー管理の成功の鍵を握っていることが明らかになっています。最終回となる今回は、エネルギー効率の目標達成と競争優位性について説明します。
③ エネルギー効率の目標を達成することは競争上の優位性を生み出す
コスト削減:
米国環境保護庁(EPA)のエネルギースター・プログラムによると、ほとんどの組織ではエネルギー管理の改善で年間2%~10%の省エネルギーが実現できます。たいていは電力使用の削減が主な目標になりますが、今日の施設管理者はより多くのコスト節減を達成するためエネルギー管理の対象範囲を広げています。2013年のデロイト調査では企業の3分の2(69%)が天然ガス消費に関連する目標を設定したことがわかっています。2012年の調査では58%でした。
また62%の企業では運輸部門のエネルギー効率を向上させる目標があるとしていますが、2012年の調査では51%でした。さらに4分の3近く(73%)が水の使用に関連した目標を設定しています。
リソース配分の改善: エネルギー予算は施設管理の予算の中で最も配分が高く、制約の少ない部分です。現状、エネルギーコストを削減できたとしても、削減分は必ずしもエネルギー予算に再配分されるわけではありませんが、ビル管理チームはエネルギー効率を向上させ、積極的な戦略を考えることに注力できるようになりました。
ブランド力:
資産価値:
ジョンソンコントロールズインスティテュートのデータよると、米国内のエネルギースターまたはLEED認証を受けたビルは標準的なビルに比べ資産価 値が高まっていることを示しています。この結果は現在米国でLEED認証を受けている面積15億平方フィートおよびエネルギースター認証を受けている面積 25億平方フィートの建物を対象としたデータに基づいたものです。米国での研究では、従来のビルに比べ認証を受けているビルは以下のような傾向があること がわかっています。
• 賃料が2~17パーセント高い
• 転売価格が5.8~35パーセント向上
• 入居率が0.9~18パーセント高い
組織目標を達成する上でのエネルギー管理の役割:
世界中の商業・産業分野の企業や各種団体の意思決定者にとってエネルギー管理の重要性は今後も変わりません。最近の研究が示しているように、エネルギー管理に成功している組織にはある特徴があります。エネルギー削減目標を設定し、その結果と進歩を計測する組織的なメカニズムがあるということです。
エネルギー管理の計画が効果的に実行された場合のメリットは非常に大きなものです。最高の価値をもった環境を創出し、ひいては組織としての目標達成にも相当な貢献をすることになるでしょう。資産価値が上がり、ブランド力も向上します。労働者の生産性も向上します。多くの調査で、快適な温度、室内の空気の質や通気度と労働者の生産性には関連性があることが示されています。つまりこれらの対策を講じることで、組織は5%かそれ以上の生産性向上を達成できる可能性があるのです。
これらの利点は、2%~10%の省エネ実現の可能性とともに、公的なエネルギー管理プログラムを実施するための説得力のある論拠となります。