ジェニファーが物心がついた頃はかなりインフラも整っていたから、“快適な環境”は当たり前のようにあったかもしれないけど、そこに辿り着くまでには長い道のりがあったんだよ。ビルの大型化や高層化など社会の変化に伴って、コントロールシステムもさまざまに多様化してきたし。なかでも1990年代は、中央監視システムが劇的に様変わりした時代。1990年にわが社から発表された「Metasys®」は、その大きな転機のひとつでもあるね。
I know.「Metasys®」は、何せ“日本初”のPC(DOS/V パソコン)による中央監視システムですものネ! 従来の専用端末によるシステムからPCベースになったことでユーザビリティの向上・低コスト・高信頼性を簡単に実現できるようになったというのは、バッチリ勉強済みデ〜ス♪
ほぉ。じゃあ「Metasys®」がユーザーから広く受け入れられた2つの大きなポイントは知っているかい?
もちろんデース!1つ目は汎用OSであるMicrosoft社のWindowsを使って動作できるという点、2つ目はシステムの分散化が可能という点ですよネ!特に後者は、従来専用コンピュータによる中央装置に全ての機能を集中させていたから、このコンピュータがダウンすると全システムがダウンする危険性があったけど、機能を複数の端末に分散して管理することで耐障害性の向上が可能になった。照明や空調の制御や防災、セキュリティなど、ビル機能をより効率よく&ローコストで管理できるようになったって、すごいですよネ。
うんうん。それ以降、自律分散システムはビルオートメーションシステムのトレンドになったしね。2001年のアメリカ同時多発テロで、ペンタゴンにジェット機が突入したのを覚えているかい?多くの犠牲者が出た悲しい事件だったけど…実はそこで制御システムがたくさんの人々の命を救ったんだよ。ジェット機が衝突した後、わが社のビル運用管理センターの働きでダンパーが閉じられて、火災と煙の拡散を最小限に抑えることができた。制御システムの功績や働きはあまり世間に知られていないけど、目に見えないところでこうして人々の役に立っているんだ。
Oh!そうだったんですね…それは素晴らしいデス!
あと特筆すべき大きな転機といえば、システムの“オープン化”じゃな〜。
カ、カネコさん!びっくりしました。
ほほほ。1995年に、アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)によってビルディングオートメーション向けオープンプロトコル仕様であるBACnetプロトコルが規定されたじゃろ。加えて、制御ネットワーク向けLONWORKS®もビル管理・中央監視システムで採用されるようになって、ビルディングオートメーションシステムの“オープン化”が業界のトレンドになった。これは大きな転機だったと言える。「Metasys®」もいち早くオープン技術に対応したからのう。
オープン化の最大の特長は、特定メーカーに限定されることなく、複数のメーカーから提供されている製品を自由に組み合わせてシステム構築できることですよネ。クオリティは高いままに最適な価格の製品を組み合わせることで、初期投資やライフサイクルコストを低減できるというのはとっても魅力的デス♪
それらもすべて、IT技術の進歩によるところがやはり大きいよね。2000年代に入ってからはインターネットの普及やコンピュータ性能のアップによって、JavaなどによるリッチなUIの提供が簡単にできるようになったから。それに汎用リレーショナルデータベースの採用によって、ビルシステム全体のエネルギー消費データの管理や解析が簡単にできるようにもなった。そのおかげで今もどんどん省エネ化が進んでいるんだ。
用語解説
ビルオートメーションで仕様がオープンにされている代表的な通信規格BACnet®は、1995年、アメリカ暖房冷凍空調学会(ASHRAE)にて規格化(ASHRAE/ANSI 135.1)された。 2003年、国際標準規格ISO16484-5として規定され、現在、世界の主流となるビルオートメーション向けの通信規格。
米国エシェロン社が開発したネットワーク技術で、設備の知的分散制御を行う技術。 主に、ビル設備管理のオートメーション、産業設備のオートメーション、エネルギーの監視・制御などといった設備制御のオートメーションシステムなどにおいて用いられる。
1990年に日本アイ・ビー・エムが発表したパーソナルコンピュータ用のオペレーティングシステムの通称。
プログラミング言語Javaのこと、もしくはプログラミング言語Javaのプログラムの実行環境および開発環境をいう。
米国出身。ジョンソンコントロールズ入社5年目の営業担当で、新人アキラの教育係。趣味は旅行。彼氏募集中。
ジョンソンコントロールズのエネルギーエキスパート。45歳、ジェニファーの上司。趣味は切手収集と省エネ。
ジョンソンコントロールズに入社して間もない若手社員。帰国子女。草食系に見えて実は野心家。趣味のゴルフはプロ級の腕前。
ジョンソンコントロールズの重鎮的存在。ビルオートメーションの歴史に関する知識に長けており、社内では“歩く社史”と呼ばれるほど。