課題 Challenges
ソリューション Johnson Controls solutions
成果 Results
「コンセプト通りの『市民にやさしい庁舎』『安全・安心の拠点となる庁舎』が完成しました」
八代市 建設部 新庁舎建設課 課長 豊田浩市郎 氏
熊本地震を背景に新庁舎の建築がスタート
50年間にわたり、市民サービスの提供と、それを支える行政活動の拠点としての役割を果たしてきた八代市役所旧庁舎。敷地には藤棚や桜が植わり、花が咲き誇る季節には憩いの場として、市民に親しまれてきました。ただ、その歴史とともに老朽化と耐震不安があらわに。平成25年には新庁舎建設プロジェクトが始動するも、『平成28年 熊本地震』によって、旧庁舎は閉鎖を余儀なくされます。「しかし、市民サービスの観点から、新たな庁舎の建設と、本庁機能の回復は急務です。新庁舎は、耐震性能の強化の必要性を踏まえ、『市民にやさしい庁舎』『安全・安心の拠点となる庁舎』をはじめとするコンセプトのもと、建設がスタートしました」そう話すのは、八代市建設部新庁舎建設課 課長 豊田氏です。
新庁舎は、「地域の環境と共に生きる庁舎」を標榜。ランドマーク性の高い外観を形成する屋根には、八代市の日射量を活かした太陽熱利用の換気システムを構築。ライトシェルフ(太陽光反射庇)は、日射負荷を抑えながら建物奥まで自然光と風を取り込みます。また、内観には市の特産品である杉やい草をふんだんに用い、八代市の自然豊かな環境を感じられる意匠デザインに。もちろん、将来の地震災害に備え、震度7程度にも耐えられる強固な免震構造を築いています。
自然換気を活用した空調自動制御技術
ジョンソンコントロールズは、「省エネ」「快適性向上の実現」を命題に、本プロジェクトに参画。免震構造を実現するための厳しい施工条件下ながら、お客様の意向に沿ったソリューションを提供しています。そのひとつが、空調自動制御技術です。新庁舎は見通しのよい吹き抜け空間のある共用ロビーを核としていますが、快適性を担保するうえで空間の上下層に起こる温度差の解消は必至です。当社はこの課題に、地中熱を活用した省エネ技術「クールピット」でアプローチ。新鮮な外気を建物に取り込み、地中熱によって予熱(予冷)したうえで冷気だまりのある下層に送り、外気と冷気の温度を比較して効率の良いほうに切り替えられるという制御プログラムを構築することで、外気負荷を削減しています。さらには、床輻射冷暖房や輻射パネルを用いた空調設備に熱源を供給するほか、一次エネルギーの発電によって生まれた廃熱を回収するコージェネレーションシステム(熱電併給)を導入し、空調システムと連携させることで、熱と電気を無駄なく利用しています。
なお、これらの自動制御を監視する『Metasys®ビルオートメーションシステム』について、豊田氏は「職員や利用者の皆様の要望に沿った空調管理を行う上で状態監視がしやすく、操作性にも長けていると感じています。また、市民活用エリアは、平日夜間や休日も市民の皆さまに開放していますが、エリア単位での空調管理もとても行いやすいです」と評価いただきました。さらに、衛生管理の視点では、「コロナ禍、ご利用者の換気に対する意識は高まっていますが、外気を利用した空調システムのため、安心感があります」と話します。
続いて豊田氏は、「将来の組織改編などを見越し、執務エリアにユニバーサルレイアウトを採用したことも、特徴のひとつです」と語ります。ユニバーサルレイアウトとは、スペースの有効活用を目的とした空間づくりを指し、本庁舎では、執務エリアを大スパンの無柱空間とし、各課の間に仕切りを設けず、机・イスなどの什器類の大きさや配置を統一しています。当社は、将来の可変性に対応するべく空調制御(VAV制御)にワイヤレスセンサーを採用。温度変化の大きい窓側のセンサーにはマグネットを付け、レイアウトの変更に応じてセンサーの移動が可能な仕様にすることで、室内の環境が変わっても安定した空調制御を実現し、職員の業務生産性向上を間接的に支えています。
このほか、庁舎の高い意匠性を損なうことのないようセンサーを人の目に触れない場所に設置。これに合わせてシステム機器の位置も調整のうえ施工を行うなど工夫を凝らしています。また、コロナ禍の工期にあたり、半導体をはじめとする資材の納期が大幅に遅延するなど、厳しい進行となりましたが、支店の人員が一丸となって期日通りに完工。高いチーム力と調整力を発揮しました。
先進的な環境への取り組みにおいて外部評価を獲得
こうして迎えた開庁当日と、その後の心境を豊田氏はこのように話します。「開庁は2月半ばの厳冬期でした。空調はうまく機能するだろうか、と不安がよぎりましたが、ジョンソンコントロールズさんのサポートもあり、杞憂に終わりました。また、南北に大きな玄関があるため、夏期・冬期の空調の効き具合も気になっていましたが、ここまで大きな問題もなく利用者の皆様にもご満足いただいています」
なお、本新庁舎は、建築物の環境性能評価システム『CASBEE熊本』においてSランクを取得。「環境への先進的な取り組みの結集によって成し遂げた賜物です」と、豊田氏は胸を張ります。「社会全体のデジタル化、SDGsの推進など、本市を取り巻く状況は大きく変化していますが、新庁舎完成を契機に、市民の皆さまに「八代に生まれて良かった」「八代に住み続けたい」と思っていただけるまちづくりにいっそう励んでいきます。ジョンソンコントロールズさんには引き続きのサポートと関係強化をお願いしたいです」と、豊田氏。『地域の環境と共に生きる庁舎』として、八代市の新たなランドマークのスタートは意気揚々と切られました。